My dear friends

今週誕生日を迎える私は、夫から
「何を贈ればいいかな。欲しいものがないなら、一緒に何か見に行こうよ。」
と言われて、小雨の中腕を組んで街を歩いた。
夢のように楽しかった夏が終わって、寂しいようなほっとするような空気だ。

「仕事用の鞄が欲しいかな。スリに遭わないように、しっかりファスナーが閉じるやつ」
純朴そうな私(一見ね)はスリの恰好の餌食なのだ。
色々見たけれど、バッグインバッグが納まらなかったり、それで形が崩れたり、私の背丈には微妙に大きすぎたりで、どこかで妥協しなければならないものばかりだった。

家に帰ってクローゼットを秋冬物に替えていると、奥の引き出しから調度自分が探していた鞄が出てきた。
数年前に地元の某ブランドをアウトレット価格で買ったのをすっかり忘れていた。
それなら、ちょっとしたお出かけ用の小さい鞄があるといいかなと思った途端、その鞄の隣から、これまたお気に入りブランドの調度欲しかった鞄が出てきた。昨年、札幌で思い切って買ったものだ。

自分の記憶力の欠如に笑ってしまった。

夫とは20年以上一緒にいるので、付き合い始めにもらった可愛らしい指輪から、義母から譲り受けたアンティークアクセサリーまで、十分すぎるほどある。
欲しいもの、何かなあ。

きっと欲しいものは誰にも期待されていない自由な時間だったり、お金では決して買えないものだったりするのかもしれない。

最近は日本在住の女友達とチャットするのが楽しい。
若い頃はいろいろな点で彼女たちに負けたくないと思っていたけれど、人生の半分を過ぎてどこかに傷を持つ私たちは戦友だ。

友人達に再会した時に、みっともなくても、少しでもましな自分でいたいと思う。
今年の誕生日に欲しいものは、素直さと向上心です。
友人達よ、これからもよろしく。

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# by ayusham | 2017-10-03 16:57 | 日々のこと | Comments(0)

ルチア

日本から帰国したら、義母ルチアの認知症が数段抜かしで進んで入院することになってしまった。

帰国してすぐ病院に飛んで行ったら、ルチアは目の前の誰のことも分からないのに、孫二人のことはすぐに分かって驚いた。
孫以外に現実を認識するものはないけれど、彼女の瞳も肌も相変わらず美しくて、独り言は相変わらず誰かを気遣っていて、彼女らしさは変わらなかった。
同じく認知症を患った義父は仕事場に戻りたくていつも怒っていて、本人が一番苦しそうだった。
だから自分が寂しいことよりも、彼女が穏やかでいることに目を向けよ自分。

ルチアの家は同じ建物の同じフロアのお隣である。
年代物の家具に、磨かれた銀細工(イタリアでは人生の節目のお祝いに銀製品を送ることが多い)、銀細工が家具を傷めないように敷かれたブラノ製の手編みレース。小さなテラスにはペチュニアの花が満開で、壁を挟んでお隣とはいえ、実用優先の我が家とは全く雰囲気が異なる。

雨戸を閉めていると、築400年の家はすぐにお化け屋敷みたいになってしまうので、毎日窓を開けて風を通すようにしている。
苦手だった庭仕事(と言っても朝に花がらを摘んで晩に水やりをするだけなのだが)も続けてみると、なんとなく花の気持ちが分かってくる。花の手入れをする人の気持ちも。

ルチアは緑の指を持つ人なのだ。私の鉢植えが死にそうな時、いつも彼女に助けてもらった。
助けてもらったのは鉢植えだけでなく、それはもう恥ずかしいくらい自分自身もだった。
私が彼女のことをルチア、tu(敬称ではなく二人称)で呼ぶのは、敬称もイタリアの何も知らない頃に彼女に出会って、全部受け入れてもらったからだ。
だから「彼女なしでヴェネツィアに生きること」は、ちょっとまだ想像したくない。
ルチアが立っていた場所、視線で花の手入れをしながら、そんな日が遠く遠く、見えない所にあって欲しいと願う。


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# by ayusham | 2017-08-21 06:48 | 日々のこと | Comments(2)

北大短歌第五号/初谷むい

山田航さんの歌を読んでから、札幌の街が山田航色に染まっていて街歩きが楽しい。
北大短歌第五号の続き。

初谷むいさん。連作30首が愛の歌だ。


水槽が聞こえるベッドが与えられ夜は飼われる側の生活


夜の水槽は確かに、見るものではなくて聞くものかもしれない。「ベッドが与えられ」恋人のアパートか。しかし彼女は恋人ではなく、水槽に飼われている気がする。


愛すって送られてきてアイスかあわたしも行くって返信をする


愛すじゃなくてアイスかあ。メッセージを送った側に何か意図はあるのかどうかはっきりしないが、初谷さんは会いに行く。

ばか高いTシャツ欲しくて、やめたけど、きみとはだかで暮らしたいけど

私が知らなかっただけで、初谷むいさんは既に短歌界のアイドルかもしれない。テレビ界のアイドルは恋愛を禁止だから、初谷さんが短歌界にいる人でよかった。

こわがってカモメ わたしたちたくさんの暴力知ってあなたを見てる

連作の中で一番気になった歌。カモメには自分たちの本当の姿が伝わる気がする。「わたしたちたくさんの暴力知って」。暴力、人には言えないこと、を知らなかったわたしたちにはもう戻ることができない。知るということは失っていくことだ。

酔いながらきみを見つける水中で唾を吐いたらきれいだろうか

初谷さんの歌は視点が突然ひっくり返される心地よさがある。
しかし、きみの立場からすると3句目から視点が自分でははなくて水中に吐かれるであろう唾なので、初谷さんはとらえどころのない、むしろ困った人と言えるだろう。

もっと初谷さんが相手を刺したり刺されたり(比喩です)な歌も読んでみたいので、彼女の他の歌も探してみようと思います。
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# by ayusham | 2017-07-14 21:31 | 歌評 | Comments(0)

北大短歌第五号/山田航

文フリに行って北大短歌第五号をゲットして来ました。

ページをぱらぱらとめくると、どうしても最初に目に留まる山田航さんの連作12首から、気になる歌をいくつか。

夕暮れの南5西2 生ゴミのボヤが鎮まるゲリラ豪雨で

私は地名が入っている歌が好きで、自分でもよく読む。札幌の人は何条の東西いくつ、で大体その辺りの雰囲気が分かってしまうんだろうな。南5西2でキスをする、ではなくて生ゴミのボヤが鎮まるところに生活感を感じる。

早苗田に立つ鉄塔を何本も見送りちょっと遠くに行こう

電車だろうか、ドライブだろうか、作者も季節も動的な感じ。

なあそんなとこにタトゥーを入れんなよ太って間延びすんだろどうせ

完璧な二人になんてなれないや死ななきゃだいたいハッピーエンド

晴れどきどき紙飛行機の金曜日もうちょっとがんばれるよ僕ら


ここまで読んで、あれ、タトゥーを入れようとしてる人、完璧な二人、もうちょっと頑張れる僕ら、もしかして相手は作者と同性の仲間だろうかと思った。
体の変な部位にタトゥーを入れようとした時、「なあそんなとこに入れんなよ」と言えること。
ぎりぎりで墜落しない紙飛行機の週末。
火花の徳永と神谷みたいに、生きている限り人生にバッドエンドはないと言える関係を想像してしまった。
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# by ayusham | 2017-07-10 20:41 | 歌評 | Comments(2)

ラベンダースティック

夫の恩師であり、私の大先輩でもあるHさんのお家に遊びに行く。

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編み物でも、ラベンダースティックでも、コツがつかめるのは3回目からだな。
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# by ayusham | 2017-06-03 04:29 | ハンドメイド | Comments(0)