訃報/異国に住むとはこういうことだ

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いつか来る知らせはふいに訪れる人込みの中で携帯を見る
ああ異国に住むとはこういうことだ船待つ息はただただ白い
信仰を持つ人ならば駆け込むのだろうか霧のサルーテ教会
ぐるぐるとかき混ぜたなら朝食のカプチーノからこぼれるこころ
んで始まる言葉はすべて温かい んだから・んだべ・んでねえべっちゃ
東北に生まれた跡を亡くしても私に遺る故郷の言葉

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# by ayusham | 2017-02-10 20:10 | 日々のこと | Comments(0)

筋トレ女子

我が家から徒歩1分圏内にジムが二軒ある。

見学してみると、一軒は今風のお洒落な内装で、ピラティスやヨガを提供しているスタジオだ。金額設定や人の様子から、客層は優雅なマダムが中心のようだ。
もう一軒は夫も若かりし頃通っていた老舗のトレーニングジムで、ゴンドリエレをはじめ常連のヴェネツィア人だけでなく、意外にもアラブ、アフリカ、東欧系の若い男女もトレーニングに励んでいる。

「ねえ、あなたすっごくスタイルがいいけど、ダイエット目的じゃないよね。どうしてジムに通ってるの?」
トレーナーと談笑しながらウォーキングしている若い女性に声をかけたら、
「私達外国人労働者は体が資本だもの。体に投資しなくちゃね。」
独特のモルダヴィア訛りで彼女は答えた。

「私達外国人労働者」という言葉には「この私」も含まれている気がして勝手に仲間意識が湧いてしまったし、いろんな訛りのイタリア語で和気藹々とした雰囲気もよかったので、今年はこのトレーニングジムに通うことに決めた。

筋トレ女子の初心者メニューをトレーナーのピーノに立ててもらう。
推定35年前のピーノ
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※ウォーミングアップ
Exercise Bike 6min
※マシンを使った下半身筋トレ
Leg Press 40kg 15×2
Standing Gluteus 15kg 15×2
※バランスボールを使った腹筋トレ
Hamstring Curl 15
Hands Off 15
※マシンを使った上半身筋トレ
Chest Press 5kg 15×2
Shouldest Press 10kg 15×2
Vertical Traction 15kg 15×2
Vertical Row10kg 15×2
※有酸素運動
Cross Trainer 6min
Step Trainer 3-6 min
Walking 4.5hm/h 12 min

へなちょこレベルでお恥ずかしいのだが、これでも負荷は少し増えた。一ヶ月前は超へなちょこレベルであったのだ。

一ヶ月で得た豆知識と意識改革は以下の通り。
・筋トレの後に有酸素運動をする。これは筋トレのパフォーマンスを上げる為と脂肪を燃焼させる為。
・大きい筋肉から鍛える。
・インターバルは1分。これはだらだらとトレーニングしない為。
・ジム通いを仕事のスケジュールと同じ扱いにする。
・8時間はしっかり寝る。

この中で、一番大事なことは寝ることである。

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# by ayusham | 2017-02-05 04:38 | 日々のこと | Comments(0)

釧路旅行~ジリは続くよどこまでも

世界湿地の日だそうだ。
湿原と言えば、夏に釧路へ行った。
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釧路湿原を散策することが目的だったが、滞在中釧路はずっと濃い霧に覆われていた。
ガイドさんによると、地元ではこの濃霧をジリと言うのだそうだ。
釧路では、年間およそ100日はジリが発生しているという。
湿原を歩いたというよりは、どこまでも続くジリの中をさまよっていた気がする。

居酒屋で隣り合わせた中国人観光客の家族は、全員ユニクロのライトダウンを羽織っていた。長袖は薄手のコットンパーカーだけ持ってきたことを後悔した。
私の知っている日本の夏は釧路にはなかった。

釧路では湿原よりも、駅前大通りの廃墟っぷりに驚いた。
どこの地方都市でも、シャッター街は珍しくはないけれど、あれだけの目抜き通りで見上げる大型ビルディングが一歩足を踏み入れたら剝き出しの地下の穴に落ちるような状態で放置されているのを見ると、ここは本当に日本かと思った。
そのまま桜木紫乃のホテルローヤルの世界です。

イタリアで1年間履いていた息子のスニーカーに穴が開いた。
新しいスニーカーが必要だったが、どれだけ歩いても靴屋はない、靴屋だったかもしれない場所しか見つからない。
やっとのことで結婚式にでも履いて行くような立派な革靴をデパート閉店セールの7割引きで購入した。そのデパートは駅前に残る最後の大型店で、8月いっぱいの閉店を控えて店員も殆どいなかった。ミラノアクセントの六十代と思われる夫婦が、がらんどうの店内を珍しそうに廻って歩いていた。
この夫婦とは、その後一週間の間にトロッコ列車で、幣舞橋の炉端焼きで、バスツアーで何度も顔を合わせることになる。ステレオタイプなイタリア人と違って遠慮がちな北イタリア人だったが、ここまで偶然が重なるとさすがにお互い打ち解け、ツアーでは一緒に行動した。
彼らは既に2度の長期旅行でそれぞれ関西、東京を廻って、今回は一か月かけて北海道を廻ることにしたのだそうだ。主要都市だけでなく利尻や知床へも行ったと言うから、釧路の廃墟など驚きもしなかっただろう。

ツアーガイドをしてくれたのは、地元に27年暮らす、ハキハキとお喋りな女性だった。
夏に札幌に出るのは熱中症が怖いと笑う。
「子どもの頃は『街へ行く』、駅前通りを歩くというのはわくわくする出来事で、デパートでショッピングしたり、映画を見たり、レストランへ行ったりしていたんです。」
「この仕事をしていると、地元の友達はみんな『観光客はみんな何しに釧路に来るの?』って聞いてくるんですよ。」
ジャスコドーナツ化現象で、今や人口は郊外に流れてしまったそうだ。

彼女は他にも、ガイドブックには書いてない地元の人の暮らしを話してくれた。
彼女が案内してくれた一日はとても楽しかった。
進めども進めども前も後ろもジリの中、
「こんな釧路が好きだから、この仕事を続ける。」という彼女の横顔は潔かった。

食べ物は何を食べても美味しかった。
釧路は日本のナポリだ。
ジリの幣舞橋は海風が冷たくて、炉端焼きで暖をとる。
水温が低い場所で育つ牡蠣は、夏でも栄養を取り込みながらゆっくり育つ。
松島の牡蠣と違って甘くて大きい北の牡蠣は、食べるというよりはツルンと私の喉を流れた。
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# by ayusham | 2017-02-02 16:44 | 旅行 | Comments(2)

メソポタミアへの旅

息子が学校でメソポタミア文明を習い終えたところ、ちょうど近所で企画展が始まり、子供向けのツアーもあったので、家族で足を運んできた。
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楔形文字は葦を切ったもので書かれていたことは知っていたが、いまいちピンと来ていなかった。百聞は一見に如かずだ。
お月見で供えるススキのような柔らかいものではなくて、葦は直径2-3センチの、建築材にも使われたような丈夫なものを使う。

三角と半円に削った両端と、持ち手の三辺を使って、粘土板に押し当てていく。
沖積平野のメソポタミアには、粘土板の材料である泥土だけはそこらじゅうにあったのだろう。
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くるくる判子(円筒印章)のコーナーが面白かった!
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くるくる判子はシュメル時代初期には封印に、後代では契約に使われた。判子には所有者の名前や肩書と共に、ユニークな図柄が彫られた。図柄や素材に厄除開運の意味を込めていた辺りが、日本の実印の扱い方と通じる気がする。
そしてこの図柄、時代ごとに王様、セックス、闘争、神話、饗宴など流行があった。

饗宴をモチーフにしたラピスラズリの判子には、大きな甕にストローを刺してビールを飲む人々が彫られていた。
「楽しくなること、それはビール。嫌になること、それは軍事遠征。」(シュメル人の諺)
ギルガメシュ物語のエンキドゥもビールを飲むことで人間らしくなり、文明人としても認められたのを思い出した。
シュメル人には五千年後の現在のイラク、見せられないな。。。

ツアーの後の、ラボラトリオ。粘土でアクセサリーを作る。
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シュメル人は男性も装飾を身に付けたそうだ。
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この企画展、春までやってるので、また行くつもり。
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# by ayusham | 2017-01-30 02:09 | 日々のこと | Comments(0)

ヴェネツィアを守る

高校時代バイトしてた地元図書館の館長は、「図書館が静かな場所であってはならない」と「静かに!」の注意書きを全部はがしてしまう人だった。
だから私も来館した小学生と自由研究の本を一緒に探してお喋りしたり、定期的に来る子育てサークルの読み聞かせにお客さんとして参加してげらげら笑ったりした。
楽しい図書館だった。

ここヴェツィアにも同じように静かにする必要のない子供図書館があって、国は違っても同じ場所があることにびっくりした。一言も「静かに!」と言われることなく、小さな息子をカーペットに転がしながら本を選んだ。日本の絵本でヴェネツィアの子供達に文庫もしたし、「ヴェネツィアは昔から異文化の交差する街だから」と司書のジョヴァンナさんには日本語図書まで購入して頂いた。

その子供図書館が今、本土移転の危機に瀕している。
昨年末、開館時間が月~木曜日までは午前中のみ、金土日は終日閉館と変更されたのを知った時、既に嫌な予感はしていた。子供図書館なのに放課後いつも閉まっている。

近年ヴェネツィアはベネトングループに買収された旧ドイツ商館(旧中央郵便局)がショッピングモールになったり、お洒落なカフェが次々オープンしたりしているけど、残念ながらそれらは市民の為の場所ではない。

市内で働くことで、職場と生活圏が重なることを心配したが、それも杞憂だった。
イタリアの普通の大学生は、ヴェネツィアで自由に遊ぶお金なんてないのだ。スーパーで買い物さえしない。ヴェネツィアの家賃は軽く一月分の給料を超えるから、学生数人で本土のアパートをシェアする。学生はアパートから持ってきたパスタ弁当を校舎の階段でつつましく食べる。

...誰の為の街なんだーーー!

このまま黙っていることもできないので、みんなで図書館移転反対の署名活動をすることにした。
今まで市内で図書活動をする人達と話したことがなかった。
ヴェネツィアを守る。もうuna foresta(外人)ではなくヴェネツィア市民として。
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# by ayusham | 2017-01-28 06:48 | 日々のこと | Comments(0)